HENの突然死が示したNFTのリスクと解決策
※この記事は、現在進行形の出来事についてまとめています。最新情報は常に変化するので、最新の情報はDiscordやTwitterで確認ください。
11月12日、突然のHENの終了報告に全NFT民が震撼しました。
HEN(正式名称 Hic Et Nunc)はTezosチェーンで最大級の取引量、ユーザー数を誇る一大勢力であり、多くのメディアアーティストが好んでNFTを発行する場所として人気でした。2022年にはETHもPoSになるのでcleanNFTという要素での差別化は将来的には無くなるとはいえ、HENはNFT黎明期からcleanNFT問題を提示して環境意識の高いメディアアーティストから支持を集めるなど、その行動哲学的なところでも多くの支持を集めていたプロジェクトでした。
あまりの衝撃から色んな噂が飛び交ったので、この記事ではHENが停止した事で起きたことをまとめてみようと思います。
1.NFTは消えるのか----マーケットプレスは消えてもNFTは消えない
2.NFTはリンク切れするのか問題---IPFSは受け継がれないと永遠ではない
3.独自コントラクト問題---転売手数料は誰のもの
1.NFTは消えるのか ---- マーケットプレスは消えてもNFTは消えない
オリジナルのHENのurl https://www.hicetnunc.xyz/ は11月12に突然終了していらい、この記事を書いている13日現在もサイトはダウンしたままです。しかし、これはHENのサーバーがサービスを終了しただけで、Tezosブロックチェーン上に刻まれているNFT自体が消滅したわけではありません。HENでmintしたNFTは objkt.com (ETH界隈でいうopenseaのようなサイト)等で引き続き売買できます。
運営がサービス終了をしてもブロックチェーンが生き続ける限りNFTが消えないというのはまさにNFTの醍醐味であり、従来の中央集権的なデジタルコレクティブサービスでは実現できなかった永続性です。
なお、HEN自体のクローンサイトも増えていて、観測されているだけでも4つ以上クローンサイトまで出ています。
http://hen.teztools.io - run by http://teztools.io
http://hicetnunc.art - run by DNS
http://hen.hicathon.xyz - run by hicathon and the hen community
http://hicetnunc.cc - run by http://hic.af
※これらのサイトは第三者がコード監査をしているわけではないので、ウォレットを繋ぐ時は自己責任にてお願いします。
2.NFTはリンク切れするのか --- IPFSは受け継がれないと永遠ではない
先ほどNFTは消滅するのか問題で、Tezosチェーンが存続する間はNFTは消滅しない!
と書きましたが、NFTは不滅でも、NFTに刻まれているリンク先のIPFSが消滅する危険性はまだあります。IPFS = 永続 では決してありません。誰かがpin留をしている限り永続なので、サーバー代を払い続ける 「誰か」 が必要です。
数百年後にもIPFSを残すなら、それこそ宗教並みの世代を超えた力が必要です。
今回のHENのケースでは、HENの運営がサービスを終了したので、HENのすべてのNFTのIPFSのピン留を行い続ける義理は旧運営側にはありません。今はまだ即サーバー閉じてないとはいえ、IPFS側のpin留めをいつ終了するかは誰にも分かりません。第三者がpin留めしてくれたとしても、それもいつまで続くか保証はないので、アーティスト側が自分でpin留をしていくのが最も確実でしょう。とはいえ、pin留って何?!という人も多いと思うので、今後はpin留代行サービスも増えていきそうです。
逆に、マーケットプレイス側がサービス終了してもアーティスト側がpin留作業を自分でやりさえすれば、今後も永続できるのがIPFSの凄さだと実証されたのも今回のHEN突然死事件でした。
今までのフォルダ形式のファイル保管形式の場合、運営がサービス終了した後に一部のデータだけ第三者がURLを変えることなく保存し続けるのは非常に困難でした。しかし、ほんの数クリックで誰でもファイル保管の引継ぎをできるようになったのがIPFSの凄さであり、「運営がサービス終了した後も永続するようにするために、中央集権的なファイルストレージではなくIPFSを使いましょう」と色んな識者が言っていたのはこういう時のためでした。
ちなみに、openseaのstorefront製のNFTはデフォルトだとopensea社の社内ストレージに保管されているので、今回のHENのようにopenseaが突然死するとファイルはリンク切れになります。opensea側もこの問題を意識しはじめたのか、最近「freezing metadata」という機能を追加し、gas代を払うだけで自分のNFTのmetadataをIPFSに保存するサービスを追加しました。
この機会に、openseaのstorefrontでNFTを作っていた人達は是非metadataのIPFS化をしておきましょう。gas代はかかりますが、将来への大きな保険になります。
追記
HENの場合、なんと50万点以上のHENのNFTを全部pin留代行するとClubNFTがアナウンスしました。アーティスト単位ではなく、コミュニティごと全部まとめてpin留め代行するなんてかなりの太っ腹ですね。記事によると、ClubNFTの人は過去に多くのNFTをpin留め漏れで喪失したそうです。2017年から2018年に発行された多くのNFTがマーケットプレイスのサービス終了によってpin留が外れてしまってデータが永遠に失われましたが、そのショックが原体験となってClubNFTのサービスを始めたそうです。
余談
今回の件で明らかになったように、IPFSは誰かがサーバー代の支払いという義務を受け継いでいかないと永続されないシステムなので、100年後や1000年後まで残るのは相当な歴史的な価値を獲得したNFTだけなのではという懸念もあります。そこで注目を浴びているのがLootなどでも採用されているフルオンチェーンと呼ばれるNFTで、ブロックチェーン上に直接描画プログラムを書き込む方式です。現状はシンプルなSVGベースのプログラムが中心ですが、将来的にはprosessingなどの高度なビジュアルプログラミングが可能な言語を活用したコレクションも増えていくのではと勝手に期待しています。
3.独自コントラクト問題---転売手数料は誰のもの
objktで売買可能で、pin留め問題もスポンサーがつきそうで一件落着しそうなHENですが、一つだけ解決していない問題があります。それは、NFTが売買されたときの二次流通手数料問題です。例えばobjktでHENのNFTを見ると、HENで一つのコレクションとして扱われているのが分かります。
今回の事象及び、NFTの課題まで含めて素晴らしいまとめだと思いました。
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