web2.0メタバースとweb3.0メタバース

皆さんこんばんは、VJyouです。この記事は、るーしっどさんの企画した「clusterユーザーと再定義する非公式アドカレ Advent Calendar 2021」用に書いています。

https://adventar.org/calendars/6363


この記事では


<1.メタバースの定義大理解 -web2.0メタバースとweb3.0メタバース>

<2.VR原住民はweb2.5メタバースの住人>

の2部建てで構成されます。

各テーマごとにやや長いので、興味のあるところから読み始めてください。

表などはgoogle docsにまとめているので、こちらの表を見るだけでもだいたいの記事の中身はわかります。

https://docs.google.com/presentation/d/1HluRIvk7y73ImPXNthwBf5DfDFVTTVo0j1w12ox7nto/edit?usp=sharing


時間の無い人向けに結論だけまとめると以下の通りです。

・web2.0型メタバースにNFTは不要。

・web3.0型メタバースは、ブロックチェーン利用前提だからトークンもNFTも必要。

・Web3.0型メタバースが本格的に動き出すには数年以上かかるから、当分の間は企業が引っ張るweb2.0型メタバースがメイン。当分はハードウェアインフラを抑えてるMeta社最強。

・web3.0型メタバースは現状グラフィック貧弱すぎるが、数年後にはweb2.0型メタバースに追いつく。

・大企業が好きなのはweb2.0型メタバース

・お互い全然違う文化だから、無理に混ぜる必要は全くない。

・clusterは、組織形態はweb2.0だけど思想がweb3.0的なweb2.5型コミュニティなので面白い!



<1.メタバースの定義大理解 -web2.0メタバースとweb3.0メタバース>

1.原住民  vs スーツ族


最近のTwitterなどを見ていて大きな溝がうまれている最大の原因は、metaverseの定義が人それぞれ全然違っていて解釈不一致がおきているからです。その原因は、web2.0型メタバースとweb3.0型メタバースを混同しているからです。日本ではメタバース = VR と捉える考え方が多いですが、この記事では メタバース = デジタル空間上の生活空間 として、VRかどうかに拘らない定義で進めます。

2021年の感覚では以下の3通りに分類されます。

VR原住民: web2.5型メタバースで生活

NF原住民:web3.0型メタバースで生活

スーツ族: web2.0型メタバースを大好きだが、web2.5メタバース島にもweb3.0メタバース島にも住んでいない。


そもそもVR原住民もNFT原住民も、それぞれ別の進化を遂げていた個別のガラパゴスであり、別々のコミュニティでした。しかし、ある日突然「メタバース」を連呼するスーツ族が現れてから世界が一変しました。

なんでこんなに急にザワザワするようになったのでしょう。理由は色々ありますが、一番影響が大きかったのは


Facebookが社名をMetaに変えたから


につきると思います。日本ではFBのユーザー数が少ないのでインパクトがあまり伝わってないですが、月間アクティブユーザー数18億人近いプラットフォームが、わざわざ社名を変えてまでMetaverseに全力投球するとアナウンスしたのだから、ビジネス界への影響はすさまじいものでした。

この結果、どの企業も中身全く決まってないけど「弊社もメタバース始めます」とプレスリリースを出す怪奇現象が生まれたのです。

これが、今まで原住民しかいなかった平和な2つの島に同時にスーツ族が侵略を開始した原因です。

そう、真の対立軸はNFT民 vs VR民ではなく、スーツ族 vs 原住民 です。そして、そのドサクサに紛れて儲けたい層が混乱を助長しているのだというのを伝えたくてこの記事を書いています。


2.そもそもweb2.0とweb3.0ってなに

web3.0という単語をそもそも初めて聞く人が多いと思うので、 shoyu.cryptoさん(  https://twitter.com/ZkEther )が図でまとめてくださったので、まずはこちらの図をご覧ください。





次に、この記事で主にテーマになる部分を表にしました。







NFT関連の話題を追ってない人からするとハテナな単語が山ほどあるので順番に解説します。なお、ここで定義している「web3.0型メタバース」というのは、まだ実在していないけれど理論的には実現可能性が見えてきた未来のメタバースを示しています。この記事では、私の思う「web3.0型メタバース」ってきっとこんな感じ、という概念をもとに進めます。

まずは、web2.0というのは皆さんの馴染みの企業が主体となって運営されるサービスの事です。

フォートナイトやあつもり等の現在存在しているサービスを思い浮かべると分かりやすいと思います。

一方、web3.0というのはコミュニティが製作するものであり、DAOと呼ばれる組織体系を取る事が想定されています。意思決定プロセス、利益分配方式等に大きな違いがあるので、一部かいつまんで解説します


3.給料を誰が貰うか

皆さん、給料って何だと思いますか?


会社に自分の時間を捧げた対価でしょうか?

自分が会社で稼いだお金の分配でしょうか?


色んな答えがあると思いますが、資金調達したお金を燃やしながら進んでる最中のベンチャーでもない限り、基本的には「会社が生み出した利益を社員に分配したもの」が給料です。何を当たり前の話をしているんだと思うでしょう。ですが、この物理世界の常識をいったん忘れる事からweb3.0への旅が始まります。


給料=「会社が生み出した利益を<関係者>に分配したもの」

と考えると、その利益を受け取る最も多くの人は誰でしょうか?



答えは、プレイヤーです。


身近な例で考えると、ソードアートオンライン ファントム・バレット編のガンゲイル・オンラインの接続報酬のようなものです。


ゲームをすればするほどお金が貰える世界なんて遠い未来でしょうか?

2021年でも、既にそれは実現しています。その最も有名な例はAxieInfinityでしょう。

コロナ禍で仕事を失った多くのフィリピンの村がAxieゲーム内で稼いだトークンだけで従来の仕事での月収分以上を稼いだことで注目を集めました。



出典: https://www.coindeskjapan.com/77546/


Axieの切り開いたPlay to Earnの世界はまだまだ発展途上なので多くの紆余曲折がありますが、web3.0型metaverseでは、プラットフォームが稼ぐ広告収入をプレイヤーに自動分配するシステムを最初に構築できたところが大きく伸びるでしょう。


これをclusterで考えてみましょう。

例えばバーチャル渋谷等の人が集まりやすい公共ワールドに企業が広告を出すとすると、現在の組織形態ではその広告収入はcluster社に入り、その利益は株主と社員へ分配され、プレイヤーには還元されません。

しかし、もしこの広告収入の一部がclusterへのログイン時間に応じて全プレイヤーへ分配される仕組みができるとしたらどうでしょう?0.0000001円単位で全世界の人間に瞬時にお金を送金できるブロックチェーンなら、こういった広告収益を全ユーザーへ自動分配するシステムも原理的には可能です。

web2.0の代表企業の一つであるMeta社(旧Facebook社)の売上の98%が広告収入だったように、広告は常に大きな資金が動く場所です。コロナ禍で物理渋谷の広告は減りましたが、オンラインバナー広告は増えました。物理空間であろうと、電子空間であろうと、人があつまる場所の広告枠の価値が吊り上がるのは世の常です。web2.0の時代には、その広告収入を生み出す元となったユーザーにその利益が還元される仕組みはありませんでした。しかしweb3.0型metaverseでは、プラットフォームが生み出す富をユーザーに直接還元する事が理論上は可能です。

そもそもweb3.0は、GAFAに代表されるweb2.0企業への圧倒的な中央集権化されたインターネットへのカウンターカルチャーとして生まれました。

スマートフォン経由のインターネットはweb2.0型企業が寡占しました。

metaverseという新しいインターネットの大陸でも、現状はweb2.0型企業が主導するクローズメタバースが主流であり、web3.0型思想から生まれるオープンメタバースはまだまだ断片的にしか生まれていません。しかし、これから10年以内には企業主体のクローズメタバースに匹敵するweb3.0型のオープンメタバース達が産まれていき、星の数ほどあるメタバース達がつながっていくマルチバースになっていくでしょう。


4.キャピタルゲインの恩恵は誰が受けるか

web2.0とweb3.0の大きな違いの一つは、キャピタルゲインの恩恵を誰が受けるかです。

web2.0型は基本的にIPOを目指すので、一般的な構図だとIPOで一番得するのは創業役員陣であり、次にVCです。ストックオプションを社員に配っている会社の場合だと、シリーズAやB頃から入社した社員でも大きなキャピタルゲインを得られる可能性があります。

当然、サービスのユーザーがキャピタルゲインをIPOで受ける事はできないのが一般的です。

一般ユーザーがキャピタルゲインの恩恵を受けるにはIPO後に株を購入するしかないので、その時にはかなり値上がった後です。


一方でweb3.0型組織の場合、キャピタルゲインを誰が受けるかはトークンを発行するタイミングによってかなり変化します。設立のタイミングでVCなどから資金調達している場合は、やはりVCや創業メンバーがキャピタルゲインを得やすい構図はIPO型ベンチャーと似ています。

大きな違いが出るのは、ユーザーへトークンをどう分配するかです。フェアローンチの概念が一般化してきた現在では、サービス初期から利用してきたユーザーへ給付金としてトークンを配る例が増えてきています。

これはclusterで例えると、サービス初期からワールド製作やイベント開催してきたユーザーへclusterがIPOと同時に株を配るようなものです。株で考えるとかなり現実離れした話に聞こえますが、web3.0の世界では「早期ユーザーへのトークンの無料配布」はもはや当たり前の文化になりはじめています。


このへんの話題に興味を持った方は、フェアローンチ、dApps給付金、などのワードで検索してみてください。uniswap,dydx,ENSなど面白い事例が既に世の中にはたくさんあります

Shingenさんの「DeFi給付金とは何なのか?」等の記事に細かく書いてあります。

https://mirror.xyz/shingen.eth/ont4DTbYy2yDFn_XgT42GjHEwrXXLwIJled8mZzwvjc


そして、コミュニティ全体がトークンホルダーになる結果、コミュニティで一致団結してプロジェクトを盛り上げようとする動機が生まれるのがweb3.0の強さです。

例えば、フォートナイトやあつもりのヘビーユーザーでも、EpicGamesの株や任天堂の株を持ってる人は少数派です。プレイヤーがトークンホルダーになる事がweb2.0との大きな違いの一つです。




<2.VR原住民はweb2.5メタバースの住人>


さて、前置きが長くなりましたがここから今日の本題になります。

現状VR古参勢が多く滞在しているVRchat,NEOS,clusterなどのプラットフォームは、まさにweb2.5メタバースと呼ぶにふさわしい、とても珍しい独自の生態系です。


運営主体が株式会社なのでキャピタルゲインや給料を受け取る層はweb2.0と共通ですが、コンテンツの目玉がユーザーが自作するコンテンツである事が大きな違いです。

例えばフォートナイトやあつもりは素晴らしいメタバースですが、そのコンテンツは運営会社の社員の方達が完全に管理しています。一方で、clusterやVRchatなどのSDK配布型のメタバースの場合は、コミュニティが価値を作っていくのでどんなコンテンツが産まれてくるかは運営企業自体にも未知数の爆発力があります。ユーザーが自由にアバターやワールドをアップロードできるからこその多様性が魅力であり、ユーザーが自主的にイベントを開拓していきます。


web2.5型metaverseの競合が出てくるとすると、おそらく3年~5年後のweb3.0型metaverseでしょう。例えばweb3.0型メタバースの代表例であるDeceentralandは、現状まだまだローポリでVRにも対応していませんが、なにせ資金力があるのでグラフィック面は今後劇的に進化しVRにも対応していくのは間違いないでしょう。

どれぐらい資金力があるかというと、土地などのNFTの資産価値を除いたMANAトークンの時価総額だけで5000億円以上あるので日本の企業で比較するとセガサミーホールディングスや三菱自動車、東京電力よりもDecentraland一社の方が時価総額では上です。axieにいたってはトークン単体で時価総額が7500億円以上なので、博報堂、スクエニ、SBIクラスの企業よりも現在の時価総額では上です。株と違ってトークンなので単純に比較はできませんが、ちょっとびっくりする金額ですね。この規模感に従来型の株式会社で対抗していくのはなかなかに大変になっていくでしょう。

グラフィック面でのプラットフォームの差がなくなってくると、コミュニティへ直接運営の利益を還元できるweb3.0型の方がクリエイターやインフルエンサーとしては稼ぐ方法が多いので、そちらに魅力を感じて引っ越す人が出てくる可能性は多いにあります。

出典:decentraland

また、法人案件についてはweb2.0型メタバースが急速に追い上げてくるのでレッドオーシャン化するのは間違いないでしょう。東京ゲームショウ2021VRやRADWIMPSのSHINSEKAIが単体のアプリ配布で行われたように、資金力のある主催者だったらイベントの度に自社アプリを独自開発して配布する方式が成立するのが実証されたのも2021年でした。


一方で、どんなに後発のプラットフォームが進化しても真似できないのは、カルチャーです。

youtube全盛期の現在でもニコニコ動画が存続しているように、強いカルチャーはお金では揺らぎません。


では、clsuterのカルチャーとは何でしょう。

clusterのカルチャーは年々変化しているように思います。

clusterちゃんや輝夜月さんがライブをしていた頃のユーザーで今も残っているのは、実はそんなに多くないと思います。

cckの一般解放とスマフォ版のリリースでも大きくユーザー層は変わりました。自分がclusterでワールドやイベントを作り始めたのはスマフォ版リリース頃だったので2020年前半でしたが、その当時と比べてもかなりコミュニティは変わってきています。

2021年12月にはついにQuest2にも新たに対応したので、さらにコミュニティは変わっていくでしょう。


こんな変わり続けるclusterのカルチャーを形作っていくのは誰でしょう。

それは、まさに今この記事を読んでいる一人一人がこれから創っていくものです。

企業とコミュニティが一緒になってカルチャーを作っていくweb2.5ならではの絶妙なバランスがいつまで続くのかは誰にも分かりませんが、自分は今のバランスが好きなのでIPO直前になっても今の良い意味の緩さが残ったプラットフォームだったら良いなと思います。

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