Metaverse分類表_web2.0版

最近よく「メタバース用のPCを揃えたいけど何を買えば良いですか」という問い合わせが多いのですが、機材構成をお勧めする前に、そもそもメタバースって何をイメージしているのか人によって全然違う事がほとんどです。VR前提のSNSを想定している人もいれば、スマフォで入るメタバースを想定している人もいます。なので、今回はメタバースについて分類をまとめてみる事にしました。

なお、メタバースとは元々はスノウ・クラッシュという小説から始まった用語なので、明確な定義は当然なく、言ったもの勝ちなのが現状です。語る人の数だけメタバースの定義があるのが現状なので、この記事はあくまでも自分の解釈するメタバースはこういうもの、という説になります。

この記事ではweb3メタバースについてはあまり書いてないので、web3メタバースについて関心がある方は Metaverse分類表_web3.0版  をご覧ください。


自分が思うに、まず大きく

1.産業用メタバース

2.エンタメ用メタバース

3.ソーシャル、カルチャー用メタバース


という大きく3つのくくりがあって、それぞれ専門特化しているパターンと、各領域が混ざっている場合があるように思います。

web3の場合はNFTやTokenEcosystemが絡んで来るので複雑になりますが、基本的なメタバースの使われ方としては上記3つの分類で今は差し支えないと思います。



まずは、ざっと各メタバースの重なり合う領域を図にしてみました。







1.産業用メタバース

これは、このブログを読んでる人の過半数には関係ないメタバースなので割愛します。

nVIDIAやMicrosoft等が積極的に取り組んでいる領域で、製造業や各種シュミレーション、XRミーティングを活かした共創ツール等用途は様々あります。BMWなどの既に稼働している例もたくさんあります。世間ではあまり話題になりませんが、市場規模は大きく、普及も早いのが産業用メタバースです。

なお、2030年頃に VRmeetingが普及しても、日本ではアバターにスーツ必須の謎ルールな企業が山ほどあると思います。



2.エンタメ特化メタバース

2-1 IPメタバース

IPメタバースはこれから一気に急成長していく領域です。
後で書く展示会系プロジェクトもIPメタバースの一種と考えれるかもしれません。

Disney、バンナムなどは既にメタバースに参入すると表明しているので、今後数年以内にアプリとして形に出していくのが予想されます。



IPメタバースの中でアバターやデジタルファッションがどういう扱いになるかは各企業の判断次第ですが、物理世界のディズニーランドでカチューシャなどのグッズが飛ぶように売れている事を考えると、ディズニーメタバースでもグッズ販売は恐らく大成功するでしょう。zepettoみたいなアバターがディズニー専用グッズを着てる未来が容易に想像つきます。また、アメーバピグのようなマイルーム機能がディズニーメタバースに実装されると、家具やぬいぐるみもヒット商品になるでしょう。
ディズニーメタバースの場合は、なるべく多くの人が体験できるようにスマフォなどのモバイル端末も視野にいれたメタバースになっていくと個人的には思います。

バンナムの場合は、IPごとにメタバースを作ると宣言しています。
バンナムといえば「ガンダム」「アイマス」などが有名ですが、それぞれ1IPだけで十分すぎるぐらいファンコミュニティと歴史があるので、ファンが集まって一緒に交流できるメタバースがあると凄い盛り上がりそうです。
ガンダムメタバースの場合、当然ただ交流するだけでなくゲームとの連携やアニメとの連携も期待されます。仲良くなった住人同士で一緒になってモビルスーツに乗ってミッションに挑んだり、ガンダムメタバース内でガンダムの新作アニメ上映会を見に行ったりするようになると、無限に過ごせそうです。

VRzoneなどのVR特化のテーマパークを黎明期から運営しているバンナムが作るメタバースですから、せっかくならVRフル対応でこれぞIPメタバース!!!というクオリティのものになるのを期待しています。

2-2 ゲームのsocial化



ゲームはメタバースなのかという話題はいつもでますが、Fortnite、Roblox、あつもり、zepetto、マイクラ等の、social要素の強いゲーム等は既にメタバースなのではと自分は思います。特にFortniteはゲーム外の世界との接点を積極的にもとうとしている姿勢が強く、Fortniteで開催されたTravis Scottのバーチャルライブは音楽業界にかなりのインパクトを与えました。


自分が思うソーシャル要素の強いゲームに共通する特徴として

・ゲームを通じて他社と交流することが重要な目的になっている

・終わらない(クリア、エンディングといった概念が無い)

の2点が挙げられると思います。

こんな事を言うと、「結構な数のゲームが何年も前からメタバースじゃないいか!」と言われると思いますが、実際そうだと思います。ですが、あえてメタバースという言葉が出てきた事で、普段ゲームをしないタイプの投資家層にもゲーム業界が変わってきたということを認識させる効果があったと思います。

オンライン化後のゲームをリアルタイムに体験していない40代以上の世代の場合、いまだに「ゲーム = クリアしたら終わり」と思ってる人が一定数存在します。

最近のメタバースバブルは投資側からしかけられたバズワードという事を考えると、普段ゲームをしない投資家層に対して、彼らが若かったころに体験したゲームと、今の10代20代が触っているものは全く別物だと認識するきっかけとして「メタバース」という単語が浸透したのは意味があると思います。

3.ソーシャル・カルチャー型メタバース

social、カルチャー型メタバースの代表例はVRchatやclusterです。
バーチャル渋谷のように、都市連動型のプロジェクトが有名です。


social型メタバースが他のメタバースと一番違うのは、メタバースに行く主目的が「交流」というふわっとした動機なところです。

例えば産業用メタバースは仕事で使うという明確な目的があり、IPメタバースはそのIPを楽しむ事、ゲームメタバースはゲームを楽しむ事、というように、それぞれやるべきことが明確にあった上での交流です。ですが、ソーシャル・カルチャー型メタバースの場合は明確な目的が定められていないので、初めての人は何をすればいいか途方にくれるケースがしばしばあります。clusterのiPhoneレビューでも、しばしば「やる事ない」「楽しむ為の時間効率が悪い」と書かれていますが、これは他のゲームアプリ等と比較しているからだと思います。

clusterやVRchatが作っているのはデジタルライフのインフラそのものなので、その中で何をしたいかはユーザー次第になります。人生の目的は、自分が決めないと何も定まらないのと一緒ですね。

例えば、ざっとclusterの用途を並べただけでも、参加者・運営ともに色んな使い方があります


<個人ユーザーの場合>

ゲームをしたい→ゲーム機能が充実してるワールドに行く

友達を作りたい→カフェやラウンジ系のワールドに行く

観光したい→景色の綺麗なワールド行く

IPコンテンツを楽しみたい→IPコラボしているワールドに行く

<チーム運営の場合>

音楽イベントやりたい→バーチャルライブイベントやる

お祭りやりたい→雪まつり、クソ速祭等

<法人の場合>

従業員の集まるオフィスにしたい→自社でオフィス作ってmtgに使う

地方自治体がPRしたい→バーチャル渋谷・原宿・大阪などのように公式コラボする

学校が使いたい→バーチャル文化祭やバーチャル卒業式



というように、ほぼ無限の可能性があります。

逆に、やれる事が多すぎるので最初は何をしたら良いアプリなのか分からないという感想が出てくるのも今は仕方ないことだと思います。


では、今後clusterやVRchatがエンタメ用メタバース等も包括していくかというと、そうはならないと思います。それぞれの用途に特化した特化型メタバースの方が専門用途には強いですし、IPメタバースはIPの囲い込みをしていくことも十分考えられます。逆に、エンタメメタバースや産業用メタバースがsocial、カルチャー型メタバースを全部代用することもできないので、やはり今後も棲み分けが続くと思います。

特に、clusterやVRchatに膨大に増え続けるユーザー製作ワールドはかなり多様性に富んでいるので、企業主体型メタバースでは真似できないコミュニティ資産となっています。これらのコミュニティ資産の価値は可視化されにくいですが、この状況はInstagramやyoutubeが買収された時、その時価総額が高すぎるんじゃないかと批判されていた状況と似ています。Instagramやyoutubeは膨大な赤字を垂れ流し続けた後に急速に収益を上げて黒字化しましたが、買収された当時にコミュニティの価値を正確に把握できていた経済アナリストは少なかったように思います。メタバースも当然同じ事が今後起きると自分は思います。


3-2 展示会

産業用メタバースとSocialメタバースの中間的用途として展示会系のプロジェクトがあります。例えば、VRchatで続いていたVketは世界的にも大規模なプロジェクトで、日本のみならず世界中の企業がブースを出しています。

Vketの場合、ユーザー出展コンテンツと企業ブースの両方がバランスよく展示されているので、まさにコミュニティ型とビジネス型をうまく混ぜています。


2021年には東京ゲームショーがVRで楽しめる専用アプリで出し、1イベント1メタバース時代の到来を告げました。東京ゲームショーは、amber社のメタバース構築プラットフォーム「xambr」を採用したようです。


また、3月には東京ガールズコレクションがメタバースアプリをリリースしました。
ロビーや企業ブースだけでなく、ライブステージなども盛り沢山なようです。
こちらは完全にスマフォアプリだけの提供のようです。


展示会イベントなどの案件はマネタイズもしやすく、イベント単位での専用アプリが今後も増えていくのではと思います。


広義のメタバースと狭い意味のメタバース

海外の記事とかだと、すべてのメタバースを含んだ電子空間上に広がる世界全部を一つにまとめて、<(広い意味の)メタバース>と表現している場合がしばしばみられます。

「メタバースは唯一」とかの海外記事の場合は、特定のアプリを示しているのではなく、概念的な意味で話しているので注意が必要です。

様々なメタバースがつながっていく状態をマルチバースと呼ぶ人もいれば、様々な世界がつながっている状態を(広い意味の)メタバースと呼ぶ人もいるわけです。

これらの概念はweb3を念頭に置いている場合も多いので、web3メタバースに興味がある方は、Metaverse分類表_web3.0版 をご覧ください。


各メタバースをNFTで繋ぐという言説も出ますが、まだアバター規格も統一化されていない現状では各メタバースを直接繋ぐのは難しいので、VRMのような規格の進化系が産まれて、世界的に浸透していくのがまずは必要です。

web3metaverseの筆頭であるDecentralandやSandboxのNFTですら、2022年3月現在ではまだ他のプロジェクトで相互運用がされていないので、各メタバースが繋がっていくのはもうしばらく先になりそうです。




DAO

DAOはweb2メタバースとも意外と相性が良い領域です。地方創生DAOがclusterでワールド持つようになったり、クリエイターDAOがフェスを主催するるという事は今後十分ありえます。例えばバーチャルイベントの代表例のVketは現在はHikky社が主催となっていますが、今後はDAOが主催となってVket規模のイベントを行うようになってきてもおかしくないと思います。

メタバース上でコンテンツを作るためにチームを会社にすると、どうしても役職を設定する都合で上下関係がうまれてしまいます。また、なかには物理世界のIDとメタバースを紐づけたくない人も一定数います。メタバース上で知り合った多様な背景の人達と一緒に何かプロジェクトを立ちあげる場合、明確な上下関係がある株式会社よりも、むしろDAOの方が運営主体として向いている場合が多いと自分は思います。


いかがでしたでしょうか。

最初にも書いたようにメタバースはまだ定義が定まっていませんが、それでもなんとなく業界ごとにメタバースの概念図のようなものがだんだんまとまってきているように思うので、この記事で書いた3つの軸を土台に分類していくと、議論をする相手のイメージしているメタバースがどの領域にあるか整理しやすいと思います。


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